イギリスにおけるデータサイエンス教育
島津 秀康(株式会社フィンデクス技術顧問・英国ラフバラ大学)
近代統計学発展の歴史を自負するイギリスにおいて,データサイエンスはどのように高等教育(大学,大学院)で扱われているのでしょうか?大学院教育に焦点を当ててみていくことにしましょう.
イギリスの高等教育は国策の教育産業として留学生の受け入れに積極的です.特に英語で教育を行う国々の高等教育機関とは競合関係にあります.そのため,アメリカより波及したデータサイエンスの影響は,カリキュラム上に比較的早くあらわれました.データサイエンスに関連するコースの新設が目立ち始めたのは2016年頃からです.その当時,およそ30強の大学が学士コース,50あまりの大学が修士コースを提供するようになっていました(ちなみに,日本で初めてデータサイエンス学部が滋賀大学に設立されたのは2019年です).来年の2022年9月から始まる新年度には80を超える大学が学士及び修士コースを提供するとしています.歴史的に統計学科が多くあるイギリスでは,当初,データサイエンスコースは応用統計学にコンピュータサイエンスの要素を加えたもの,あるいは他分野と連携する形で構成されるものが多くありました.最近ではコンピュータサイエンス科目主導のコースも多くなっている印象を受けます.
一般にイギリスの修士課程は1年間で,学部のように授業を受けて単位を取る(研究要素の無い)コースが一般的です.一学期は・・・
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